社会に出てから40年、会社設立から30年が経ちました。私が学校を卒業した年は就職難でしたが、静岡で職を得ることが出来ました。私が会社の経営側に立つようになった今はよく雇っていただけたと感謝の念が思い起こされます。

まず就職した先は消毒業界という業種でしたが、会社が人を育てる余裕があった時代でした。研修で各営業所を回り、多くの皆さんにたくさんのことを教えていただきました。今思い出しても感謝に堪えません。

しかし、私はどうも組織の中で順応できない性分に気がつきました。転機になったのは三保半島にあった造船会社の進水式の光景でした。大きな音と折戸湾を揺り動かすような迫力に衝撃を受けました。私の中では、折戸湾よりも胸中の波立ちのほうが大きかったのかもしれません。

そこでものづくりへの憧れが膨らみました。また縁があって法面業界の門を叩くことが出来ました。

法面の定義は、土木工事に伴う切土、盛土によって形成される斜面とされます。私が望んだのは、法面保護工の中でも植生工に分類されます。植物、地質、肥料など学問の応用です。幸い興味がある分野でしたし、野外での調査や実証が主になりますので、その点でも自分に向いている職業だと実感しました。

その会社では現場管理の担当でしたが、上司から懇切丁寧に指導を受け、静岡県内を中心に神奈川、山梨、岐阜、長野に出向きました。そこでまず気が付いたのは地質の違いでした。

趣味の延長上にある仕事は、営業、現場作業、管理とも苦にならず年月を重ねていきました。静岡県内は、火山噴出物が中心の東部とそれとは別に四万十付加体が主の中部、西部の法面は中央構造線を境に大きく違います。天竜川から東西で植生が変わります。学問として学んだ事象を自分が踏破して確認する作業は楽しいものでした。

特に前職でみっちり鍛えられた「調査報告書」の作成の経験が生きました。今のようなパソコンがない時代でしたがお客様に製品を買っていただくという姿勢は変わりません。いかに心を動かす文章を作るかに注力しました。

また文章として残す営業は担当者だけでなく、その上司の方まで伝わるものだと実感しました。

現場作業は経験が大きく左右します。事故のないまた無駄のない利益の上がる手段を会得するためには知恵と時間が必要で大変な作業ですが、チャレンジの機会を与えられたとすれば面白くなります。

現場管理は競争で他社に追いつくのが精一杯ですが、手を抜かず精進に努めております。

長い年月の間変わったもの、不変のものありますが、お客様からの信頼は不変のもののひとつです。５年、１０年後を見据えて信頼の続く弊社でありますよう努力してまいりますので、皆様これからもご支援よろしくお願い申し上げます。

代表取締役　　池田　健一